Case 03

「楽しい」にいたるまでのプロセスには、「厳しさ」が必要だった
ヴァイオリニスト松尾依里佳の「UCHILA」

2016/04/11
音楽活動とタレント活動を両立させ、幼い頃に掲げた夢を実現している松尾依里佳さん。そんな松尾依里佳さんを育てた街・大阪に関するお話や、夢を叶えるために大切なことを教えてもらいました。

卒業文集にも「将来は音楽家になりたい」と書いていた子ども時代

― 松尾さんは関東の番組でも関西の番組でも拝見しますが、いつも東京と大阪を行ったり来たりしているんですか?

そうなんです。今は東京がベースで、大阪には通う感じです。いつも行ったり来たりしていて、「東京の次の日は大阪で、翌日はまた東京」という時もありますし、一週間ずっと関西でお仕事っていう時もあります。

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― 東京での自分と大阪での自分ってキャラが変わったりしますか?

そうですね、大阪に行った際に周りがみんな関西の人だと、やっぱり関西の自分が出ます(笑)。言葉の力はすごく大きくて、東京にいると関西弁が出ないせいか「関西の出身だって気付かなかったです」と言われることが多いです。
「探偵!ナイトスクープ」でも、秘書である私は基本的に標準語でご依頼のお手紙は読むようにしてるので、「意外!」って関西の方から言われることもあって。
「いやいやいや私関西出身ですよ!」っていう気持ちがますます芽生えてます(笑)。

【探偵!ナイトスクープ】
1988年から朝日放送にて放送される関西の長寿バラエティ番組。探偵に扮した出演者達が視聴者から寄せられた疑問や依頼を調査し解決していく。

― 関西のどういった地域で生まれ育ったんですか?

育ったのは大阪の交野市です。すごい田舎で、一応ベッドタウンというと聞こえはいいんですが……(笑)。快速で2、30分で大阪市内にもいけますし、便利で通いやすいところなんですけど、とても自然豊かなところでもあります。
一度取材でカンニングの竹山さんと一緒にヘリコプターで大阪市内上空を飛んだんです。伊丹空港から出発して、甲子園までもヘリだと一瞬で行けるんですね。「じゃあUSJに行こう!」ってなったときも一瞬でぴゅーんて。すると竹山さんが「せっかくだからえりかちゃんの実家のほうも行ってみようよ」って言ってくださって。でも……ヘリでもすごい遠くて(笑)。そのうち山だらけになって「私が生まれたのこのへんですよ!」って言ったら竹山さんが「えりかちゃんこんなとこから通ってるのー!?」って(笑)。

― ヘリでも遠い町で、子供の頃はどんな遊びをしていたんですか?

山でコロコロと……(笑)。家の裏が公園のように広かったので、そこを走り回ったりしてました。でも近所のおばちゃん曰く、「えりちゃんの靴はよごれへんなあ」って言われて。たしかに習い事なども多かったので、自分が思ってるよりは外で活発に走っている子ではなかったのかな? 習い事はヴァイオリンが一番メインでしたが、月曜日から金曜日まで英会話、公文、テニス、スイミング、ピアノ……いろいろやってましたね。

― ヴァイオリンは何歳から?

ヴァイオリンは4歳から始めました。習い事の中でもヴァイオリンが一番自分の中で大切だっていうのは小さい時からありましたね。ぼんやりした子だったのでマイペースにやっていたと思ってるんですけど、7歳の発表会のときに上達が早くて驚かれたっていうのは周りから聞いたことあります。

― ご自身で覚えていますか?楽しくてやってたのか、目標を持ってやってたのか。

ええ。一緒に習っている門下生のすごく上手な方を見て、わたしも頑張ろうという気持ちがあったのは覚えてます。でもやっぱり音楽というものがとにかく好きで。小学校のクラスのみんなで歌を歌うときも率先して歌うような子で、「えりかちゃんは歌姫ね〜」なんて先生に言ってもらったりとか(笑)。卒業文集にも「将来は音楽家になりたい」って書いてありました。

― 人前で表現したりとか、目立つのが好きな子でもあったんですか?

多分嫌いではなかったんだと思います。というより、あんまり人にどう見られるかを気にしない子というか……。アメリカ行った際に、「日本人の子はシャイっていうけど、君は全然ちがうね〜」なんて言われたりもして。今もそういった点は変わらないと思います。語学が堪能なわけでもないんですけど、「わーい!」みたいな感じのオープンマインドさだけは(笑)。ちょっとはね、自粛するってことも学んだほうがいいとは思うんですけど……(笑)。

― 度胸があるんですかね?

あ、そうみたいです。母曰く、「度胸がある」って言ってました(笑)。
親が「大丈夫?」って心配なことも、「大丈夫!」って言っちゃうような。そんな子どもです。

楽しめるにいたるまでのプロセスには「厳しさ」が必要である

― そういった習い事としてのヴァイオリンが、お仕事としてのヴァイオリンに変わるターニングポイントは?

中学生の時に、今はもう亡くなられた工藤千博先生という恩師に出会ったのが私の中の大きなターニングポイントでした。
工藤先生は有名な門下生を多く輩出する方で、国際コンクールで優勝したり、国内トップのコンクールで優勝されるような優秀な生徒さんがたくさんいらしたんです。そんな先生に教えてもらえるとなって、最初はすごく緊張して、レッスンに行くのもお腹が痛くなるような。

― 度胸のある松尾さんにはめずらしく(笑)。

そうですそうです(笑)!工藤先生には、音楽をする上での厳しさと表現することの深さを教えてもらいました。先生に言われて印象に残ってるのが、「なぜヴァイオリンをやっているの?」と。私が「音楽が好きなので」って言うと、先生は「コンサートに来てる人もみんな音楽好きだよ」って言うんです。ハッとしました。
演者側は「好き」っていう気持ちだけでは足りなくて、もっと明確なことを先生は気づかせてくださいました。レッスンをしていても「もっと表現して、もっともっと!」っておっしゃるんです。「まだ足りない!もっと強く強く!そんなんじゃ足りないよ!」って。
自分の内面的な充実や、思いの強さを引き出してくれる先生でした。自分の中で「もっと表現したい!」とか「もっとこんな音を出せるようになりたい!」といった貪欲さも出てきたし、将来音楽家になりたいという強い気持ちを改めて引き出してくださったのが工藤先生です。そして高校生になった時に「私は音楽の道で生きていきたい」と決意したんです。

― そこまで自分を切り替えてくれた人に出会えたのは素晴らしいことですね。

自分が楽しくやることはすごく大事なんだけれど、楽しめるにいたるまでのプロセスには「厳しさ」が必要であるってことを教えていただけたのは本当に感謝しています。工藤先生との出会いがなかったら今の私はいないと確実に言えます。

― もうきついな、自分には無理だな」っていう瞬間はなかったのですか?

私、根がすごくポジティブなんです。「やってないからできないんだ」と考えるタイプで。受験勉強もそうだったんですけど、勉強してないならそらできないわなっていう(笑)。だから「できるようになりたいならやろう」って思えるんです。

― それは側から見ると強さに見えますが、そういった強さは小さい頃からしていた習い事の影響が大きいんですかね?

そうですね。やったらやっただけ成果が出るっていう体験は子どもの時にあったと思います。やってできたらすごい褒めてもらえたとか、頑張ったらご褒美が一個増えるんだ!とか。
あと、母を喜ばせたいって想いがどこかにあると思うんです。母が習い事の送り迎えもしてくれて、レッスンも全部みてくれて、一緒に辛いことも乗り越えてくれていましたから。それは今でも感じます。

仲良くしたいっていう気持ちだけで寄ってっちゃう

― ヴァイオリニストというご職業の一方で、タレントというお仕事もされてます。音楽活動とタレント活動はどのように両立されていますか?

昔から、勉強とヴァイオリンを両立をするのが常だったんです。それが良い相乗効果を生んでいたんだと思うんです。とても良い気分転換だったし、一方だけをやっていたら気づけないことも必ずあって。それに気づかせてくれるのが別のことをやっている時なんです。
タレントのお仕事の際には第一線でご活躍されてる他ジャンルの方に触れるだけですごく良いものをいただいたなって気がするんですよね。こういうお仕事をしてなかったら出会えないような方たちばかりなので。

― 俳優さんも、芸人さんも、また音楽の方も。

ええそうです、その方たちの舞台裏の姿とか、お仕事をされている姿もみなさんキラキラしてらっしゃって。日々そういった感動を受けることが私の心の栄養です。

― 関西のお話しに戻ります。自分が大阪の人間だなって思うことってありますか?

そうですね、距離が近いって言われます(笑)。人との距離が(笑)。

― それは先ほどから全体的に通ずる話ですよね(笑)。だって海外に行ってもそうですもんね(笑)。

私の主人は子どもの頃から都会っ子だったので、距離が近い近いって(笑)。そういう時にすごい関西っぽいって言われます(笑)。でも根っからの関西人だからしょうがないかな〜。仲良くしたいっていう気持ちだけで寄ってっちゃうので、相手がどう思ってるかの配慮がちょっと足りないんですよね(笑)。

― なんだか子犬みたいですね(笑)。

あはは(笑)。これでも最近は気をつけるようになって、「えりかちゃんすごく大人になったね」ってみなさん言ってくださるんですよ。確かに自分でも昔はひどかったなって(笑)。実際に「ちょっと距離近い」って言われたこともあって。どうしても関西弁だと距離が近くなるんですよね(笑)。

― それは関西の方特有のコミュニケーション方法ですかね。

関東だと友だちが買ったものに対して「それかわいいね」といった同調の文化というイメージなんですが、関西だとかわいいものに対して、「いくらやったん!?」「これ実は安かってん!」みたいな安さ自慢が始まるというか……あ、でもこんなこと言ったら関西の人に怒られそうですけど(笑)。「関西もそんなんちゃうで!」「そんなんあんただけだ!」って(笑)。

― 大阪の好きなところってどんなところですか?

お店にツッコミどころ満載なものが置いてあったりするので、お店を見るだけでも楽しいし、お店のおじさんおばさんが名物の人だったり、どこ行っても面白いので飽きない街ですよね。

― たしかに街自体がツッコミ待ちですね(笑)。

そうなんですよ(笑)。

― 逆に大阪の嫌いなところは?

んー……(長い時間悩む)

― そこまで悩むってことはないんでしょうね(笑)。

― 最後に大阪の若者に向けてメッセージをお願いします。

関西が大好きなので、関西地方で仕事ができるのはすごく幸せなことだなって思います。現在東京に住んでいますが、私もレギュラー番組のお仕事は関西ばっかりなので。
ご家族や友人のサポートが周りにたくさんある中で仕事ができるというのはすごく強力な武器です。ぜひみなさんもそれぞれの道で関西を盛り上げていきましょう。みんな応援してくれますから。

― しかもその応援は距離が近い……(笑)。

そうそう(笑)。困っている人に優しい街ですからね。なにかあったら力になってくれる心強い方が大阪にはたくさんいるので、みなさん頑張ってください!

このインタビューに答えた人

松尾依里佳

1984年大阪府交野市出身。4歳からヴァイオリンを始め、京都大学経済学部在学中にプロのヴァイオリニストとしてデビューする。音楽家としての活動だけでなく、知性を活かして「クイズプレゼンバラエティQさま!!」など多数のクイズ番組などでも活躍。現在、「探偵!ナイトスクープ」の3代目秘書を務めている。
> オフィシャルブログ 『えりかの#な毎日♪』
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[ライター/酒井栄太(Concent) カメラマン/黒川隆斗(Concent)]

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